【原作者のことば】
私は25歳の時、神戸からブラジルのサントス港まで、船旅をしました。2か月の長い航海でした。
船にのっていると、いつもいつも水平線が見えます。空と海を分ける一本の線です。船はそれに向かって進んでいきます。
「あのむこうには、なにがあるのだろう」私は毎日、甲板にたって、つま先立ちになり、水平線を見つめていました。
海は終わりがないほど広いのです。なにが現れてもふしぎではありません。「何かな、何かな」と、心が騒ぎました。
そして、それはやってきました。
水平線を境に、空と海が、本のページのように、くるりとめくれて…どきどき、わくわくするお話の世界を見せてくれました。
それを書きとめたのが、この「ズボン船長さんの話」です。
この度、若い人たちが夢と、才能と、力を集めて、「ズボン船長さんの物語」をミュージカルという船に載せ、
出港しようとしています。
どんな舞台になるのでしょう。待ちどうしいです。ズボン船長さんは、七つの海を航海しました。
神戸を皮切りに、七つの海を持つ地球のすべてのひとに見ていただきたいと思います。
思い出って、過ぎた昔のことと思いがちです。大事に閉まっておきたい懐かしい宝物。でもそれだけでしょうか。
私は思い出は、これからを生きる力だと思います。一緒にいい思い出をつくりましょう。
なんだかわくわく、どきどきしてきました。
作家 角野栄子